君の世界に入りたい

僕の言葉があの彼女らしき人に通じたかは分からないけれどもし通じていれば今頃あの二人は修羅場になっているだろう。通じたところで信じない可能性も大いにあるけれど。

さっきよりは顔色が良くなったけれどまだまだ青白い顔をしている。水とか飲ませてあげたいけど綾人くんが服の袖を持って離してくれない。綾人くんにこんなに弱々しい一面があったなんて。

「真白くん!綾人!」
「父さん?」

入り口から出てきたお父さんと羽山くんを見た綾人くんは目に涙を浮かべてお父さんの元へと駆け寄った。

「父さんだよ。怖かったなあ、もう大丈夫だからな」

そう言ってお父さんは綾人くんを強く抱きしめた。綾人くんは強く強くお父さんに抱きついて大粒の涙を流していた。それだけ怖かったんだ、それだけ会いたくなかったんだ。僕が電話なんかしなかったら…

「真白くん、君がそばにいてくれて良かった。ありがとう」
「い、いえ!元はと言えば僕がここに呼んだのが悪いので」
「それは違う、行くという選択をしたのは綾人だ。綾人が自分と向き合おうと一歩踏み出したんだ。そばで支えてくれてありがとう」