元恋人と、今日から同僚です

 プロジェクトが始まって二週間。
 最初の大きな壁にぶつかった。

 外部のシステム会社との調整がうまくいかず、スケジュールが遅れ始めた。
 メンバーの一人が体調を崩して、一時的に離脱。
 予算も、想定より膨らんでいる。

 頭が痛い。
 リーダーとして、何とかしなければならない。でも、どうすればいいかわからない。

 残業を終えて、会社を出たのは十時過ぎだった。
 駅に向かって歩いていると、スマホが鳴った。朝倉からの電話。

「もしもし」
「終わった?」
「うん、今駅に向かってる」
「俺も駅の近くにいるんだけど。会える?」

 驚いた。
 こんな時間に、なぜ駅にいるんだろう。

「……いいよ。どこ?」
「改札の前」

 改札に向かうと、朝倉が立っていた。
 手には、コンビニの袋。

「何してるの、こんな時間に」
「迎えに来た」
「え」
「今日、遅くなるって言ってたから。心配で」

 胸が、じんわりと温かくなった。

「……ありがとう」
「これ、夕飯。食べてないでしょ」

 コンビニの袋を渡された。
 中を見ると、おにぎりとサンドイッチ、野菜ジュースが入っている。

「私のために?わざわざ?」
「当たり前でしょ。俺、真帆の彼氏だから」

 朝倉が、さらっと言った。
 その言葉が、妙に嬉しかった。

「家まで送るよ」
「いいよ、悪いから」
「いいから。行こう」

 朝倉に手を引かれ、電車に乗った。