元恋人と、今日から同僚です

 公園を出て、駅に向かって歩いた。
 手を繋いだまま。

「ねえ、朝倉」
「はい」
「私たち、付き合ってるの?」

 素朴な疑問だった。
 お互いに好きだと言った。手を繋いでいる。
 でも、正式に「付き合おう」とは言っていない。

「……どうなんだろう」

 朝倉が、少し考えてから言った。

「俺は、付き合ってるつもりでいるけど」
「え、いつから」
「真帆が好きって言ってくれた時から」
「……勝手に」
「ははは」

 朝倉が、照れくさそうに笑った。

「じゃあ、改めて。告白する」
「……今さら」
「今さらでも、ちゃんと言いたい」

 朝倉が、立ち止まって、私の方を向いた。

「結城真帆さん。俺と、付き合ってください」
「……」
「好きです。ずっと、好きでした。これからも、好きです」

 真剣な顔。
 でも、どこか嬉しそうな顔。

「……はい」

 小さな声で、答えた。

「もう一回言って?」
「はい、って言った」
「聞こえなかったよ?」
「嘘。聞こえてたでしょ」

 朝倉が、笑った。
 私も、つられて笑ってしまう。

「じゃあ、俺たち、今日から正式に恋人だ」
「うん」

 また歩き出した。手は……繋いだまま。
 夕暮れの空が、オレンジから紫に変わっていく。
 いつも以上に、綺麗だった。

 五年越しの再会。
 やっと、ここまで来た。

 まだ不安はある。これからうまくいくかわからない。
 でも、一緒にいたい。

 その気持ちだけは、確かだった。