元恋人と、今日から同僚です

 その日から、私たちは意識して切り替えるようになった。
 仕事中は、同僚として接する。必要以上に意識しない。
 仕事が終わったら、素直に気持ちを出す。

 とはいえ、意識しないようにしようとすると、余計に意識してしまう。
 でも、少しずつ慣れてきた。



 木曜日の夜。
 残業を終えて、朝倉と一緒に会社を出た。
 朝倉が口を開いた。

「今日は、仕事中、大丈夫だった?」
「まあまあ。今までより、だいぶマシだった」

「よかった」

 朝倉が、ほっとしたように笑った。

「俺、実は今日も何回か真帆のこと見ちゃってた」
「知ってるよ。視線、感じてたから」
「バレてたか」
「バレバレだよ」

 二人で、笑った。

「でも、俺、今日、改めて思った」
「何を」
「仕事中、気になるのは、しょうがない。でも、それで仕事の質を落とすのは違う」
「うん」
「だから、もっと頑張ろうと思った。真帆の足を引っ張らないように」

 その言葉が、嬉しかった。
 朝倉は、私との関係を理由に仕事を疎かにしようとしない。
 むしろ、もっと頑張ろうとしている。

「私も、頑張る。朝倉に負けないように」
「競争だな」
「切磋琢磨って言ってよ」

 朝倉が、楽しそうに笑った。

「じゃあ、切磋琢磨しましょう。仕事でも、プライベートでも」
「うん」

 駅に着いて、改札の前で立ち止まる。

「じゃあ、また明日」

 手を振って、別れる。改札を抜けながら、思った。

 仕事と恋愛。
 両立するのは、難しい。でも、不可能じゃない。
 二人で工夫して、乗り越えていける。

 そう思えるようになっていた。