元恋人と、今日から同僚です

 午後、仕事をしながら、宮本の言葉を考えていた。

 朝倉は五年間もの間、私のことを想ってくれていた。

 私はどうだろう。
 正直、朝倉のことを考えなかったわけじゃない。
 ふとした瞬間に思い出すことはあった。
 でも、連絡を取ろうとはしなかった。会おうともしなかった。

 逃げていた? そうだ。
 朝倉と向き合うのが怖くて、忘れたふりをしていた。

 定時過ぎ、朝倉が声をかけてきた。

「結城さん、今日、このあと時間ありますか?」
「……何?」
「少し、話したくて。土曜日の続きというか」

 続き。
 何の続きだろう。

「……いいよ」





 会社の近くの公園。
 前に二人で話した場所だ。朝倉が「ちゃんと話したい」と言って、私が断った場所。

 ベンチに並んで座る。
 空がオレンジ色に染まっている。

「土曜日、ありがとうございました」

 朝倉が、言った。

「正直に話してくれて。気持ちを伝えてくれて」
「こちらこそ」
「俺、ホント嬉しかった。真帆が、俺のことを好きだって言ってくれて」

 朝倉の横顔を見る。
 夕陽に照らされて、穏やかな表情をしている。

「でも、俺も反省したことがあって」
「反省?」
「そう。五年前のこと」

 朝倉が、少し間を置いた。

「俺、『待つ』って言葉を、都合よく使ってたんだと思う」
「……どういう意味?」
「真帆が忙しい時、俺は『待ってる』って言って、何もしなかった。待ってれば、いつか真帆が振り向いてくれると思ってた」

 朝倉が、自嘲気味に笑った。

「でも、それは違った。待ってるだけじゃ、何も変わらなかった。真帆はどんどん仕事に没頭して、俺から離れていって」
「……」
「俺は、待ってると言って、何もしなかった。それが、ダメだったんだと思う」

 朝倉の言葉が、胸に響いた。