元恋人と、今日から同僚です

 カフェを出る頃には、すっかり暗くなっていた。
 
 二人で駅に向かって歩く。
 夜風が心地いい。
 腫れぼったい瞼をよく冷やしてくれる。

「これから、どうしますか」

 朝倉が聞いた。

「どうするって?」
「俺たち。付き合うとか、そういうこと」

 付き合う。
 その言葉に、少しだけ躊躇した。

「……すぐには、決められない」
「そうですか」
「ごめん。せっかく気持ちを伝えてくれたのに」
「いいですよ。俺は待ちますから」

 朝倉が、笑った。

「今日、真帆の気持ちが聞けただけで十分。あとは、真帆のペースで」
「……ありがとう」

 駅に着いた。
 改札の前で、立ち止まる。

「じゃあ、また月曜日」
「はい。おやすみなさい」

 手を振って、別れる。
 改札を抜けながら、今日のことを振り返った。

 逃げていたのは、私の方だった。
 それを認めて、やっと前に進めた気がする。

 朝倉のことが、好き。
 それは、もう確かだ。

 でも、付き合うかどうかは、もう少し考えたい。
 五年前の失敗を、繰り返したくないから。

 逃げないで、言葉にして、伝えて。
 そうやって、ゆっくり関係を築いていきたい。

 今度こそ、ちゃんと向き合いたい。
 窓の外を眺めながら、そう思った。

 流れていく景色はいつもより色づいて見えた。