元恋人と、今日から同僚です

 しばらくして、やっと涙が止まった。
 ティッシュで顔を拭いて、深呼吸する。

「……ごめん、取り乱した」
「いいですよ。泣きたい時は、泣けばいい」

 朝倉が、穏やかに笑った。
 その笑顔を見て、胸がぎゅっとなった。

「朝倉」
「はい」
「私、ずっとわからなかった。自分の気持ちが」

 正直に言った。

「朝倉のことが好きなのか、昔の記憶に引きずられてるだけなのか」
「……」
「でも、今日話して、少しわかった気がする」

 朝倉の目を、真っ直ぐに見た。

「私、朝倉と話してる時、楽しい。一緒に仕事してる時、嬉しい。優しくされると、胸がぎゅっとなる」
「……」
「それって、きっと——好きってことなんだと思う」

 言葉にした瞬間、心臓が跳ねた。
 言ってしまった。自分の気持ちを。

 朝倉が、目を見開いた。
 それから、ゆっくりと、笑顔になった。

「……本当ですか」
「うん。本当」
「俺のこと、好きって言ってくれたんですか」
「……言った」

 恥ずかしくて、顔が熱くなる。
 朝倉は、嬉しそうに笑っていた。子供みたいな、素直な笑顔。

「俺も、好きです。ずっと」
「……知ってる」
「でも、もう一回言いたい。俺は、真帆のことが好きです」

 真剣な目。
 でも、どこか嬉しそう。

 私も、笑った。
 涙の跡が残った顔で、多分ひどい顔だけど、笑えた。

「……ありがとう」
「こちらこそ」

 二人で、笑い合った。
 カフェの中で、涙を流しながら。

 傍から見たら、変な二人だったと思う。
 でも、今はそれでいい。

 やっと、本当の気持ちを伝えられたから。