元恋人と、今日から同僚です

「でも、私から見たら、恒一は悪くなかったと思うの」

 美咲さんが、真っ直ぐに私を見た。

「恒一は、真帆ちゃんのことが心配だっただけ。
 終電まで働いて、土日も仕事、痩せていく彼女を見て、
 心配するのは当然でしょ?」
「……はい」
「でも、言い方が下手だったのね。
 『休め』って言えば、否定してるように聞こえるし」

 わかる。今ならわかる。

 朝倉は、私を否定したかったわけじゃない。ただ、心配していただけだ。
 でも当時の私には、それが伝わらなかった。

「真帆ちゃんも、言葉が足りなかったんじゃない?」

 美咲さんが、優しく言った。

「恒一が心配してくれてるのは、わかってたでしょ?
 でも、『ありがとう、でも今は頑張りたい』って言えなかった。
 その代わりに『仕事の邪魔をしないで』って態度を取った」

 図星だった。
 当時の私は、言葉で伝えることをしなかった。
 朝倉が察してくれるだろうと思い込んでいた。
 察してくれないから、イライラして。八つ当たりした。

「お互いに言葉が足りなかったのよ。だから、すれ違ったんだと思うの」

 美咲さんの言葉が、胸に刺さった。
 そうだ。そうだったんだ。
 
 私は、朝倉を責めていた。理解してくれないと。
 言葉にして伝えようとしなかった。

 お互いに説明不足だった。
 それが、五年前の真実だったんだ。