元恋人と、今日から同僚です

「……普通です。仕事は問題なく」
「仕事は、ね」

 美咲さんが、意味深に笑った。
 何かを知っている。そんな目だった。

「真帆ちゃん、五年前のこと、覚えてる?」
「……はい」
「別れた理由、恒一から聞いた?」

 別れた理由。
 価値観の違い。将来設計の違い。感情のすれ違い。
 ——私が、仕事を優先したから。

「……聞いてます」
「本当に? 全部?」

 全部?その言葉に、引っかかった。

「どういう意味ですか」
「恒一、全部は言ってないと思うの。気持ち伝えるの下手だから」

 美咲さんが、コーヒーを啜る。
 私は、黙って続きを待った。

「五年前、恒一が真帆ちゃんと別れた後、すごく落ち込んでた」
「……そうだったんですか」
「うん。一ヶ月くらい、ほとんど食事も取れなくて。仕事も手につかなかったみたい」

 知らなかった。
 別れた後、朝倉がどうしていたか、私は知らなかった。
 考えようともしていなかった。

「私、心配で話を聞いたの。そしたら——」

 美咲さんが、少し間を置いた。

「恒一、言ってた。『俺のせいで、真帆を追い詰めた』って」

 追い詰めた。
 その言葉に、胸が痛んだ。

「『真帆が頑張ってる時に、自分の気持ちばかり押し付けた。応援しなきゃいけないのに、足を引っ張った。俺が悪い』って。ずっと、自分を責めてた」

 朝倉が、自分を責めていた。
 私のせいで。