元恋人と、今日から同僚です

 定時を過ぎると、編集部の人が減っていく。
 金曜日だから、みんな早めに帰る。

 私も帰ろうと、席を立とうとした時、スマホが鳴った。
 見ると、知らない番号からの着信。
 出ようか迷ったけど、仕事関係かもしれないと思って、電話に出た。

「はい、結城です」
「真帆ちゃん?」

 聞き覚えのある声。
 誰だろう、と思った瞬間、気づいた。

「……美咲さん?」
「久しぶり。覚えててくれた?」

 美咲さん。
 朝倉の姉だ。五年前、付き合っていた頃に何度か会ったことがある。

「お久しぶりです。どうしたんですか」
「ちょっと、話したいことがあって。今、時間ある?」

 朝倉の姉から、突然の電話。
 何の用だろう。嫌な予感がした。

「……はい、大丈夫です」
「じゃあ、今から会えない? 案件帰りで会社の近くまで来てるの」





 オフィスビルの近くにあるカフェで、美咲さんと合流した。
 五年ぶりに会う彼女は、相変わらず綺麗で、落ち着いた雰囲気だった。
 朝倉より五歳上で、結婚して子供もいると聞いている。

「突然呼び出してごめんね」
「いえ……何かあったんですか」
「恒一のことで、話したいことがあって」

 やっぱり、朝倉のことだ。

「最近、恒一と同じ部署になったんでしょ?」
「……はい」
「どう? うまくやってる?」

 うまくやっている。
 そう言えたらいいのに。