元恋人と、今日から同僚です

 会議が終わり、席に戻る。
 気まずい空気が、編集部全体に漂っている。いや、気のせいかもしれない。私が勝手にそう感じているだけかもしれない。

 勝ち負けじゃない。仕事なんだから、いい意見は取り入れるべきだ。
 頭ではわかっている。わかっているから、なおさら(かん)(さわ)る。
 五年前も……朝倉の言葉は、いつも私の痛いところを突いてくる。

 デスクで企画書を修正していると、隣に影が差した。

「さっきは、すみません」

 朝倉だった。

「会議の場で言うべきじゃなかった。後で個別に伝えればよかったですね」
「……別に。間違ったこと言ってないでしょ」

 顔を上げずに答える。

「そういう話じゃなくて——」
「朝倉さん」

 遮るように、私は言った。

「仕事の意見は、仕事の場で言って。それが普通。気を遣われる方が、やりにくいから」

 冷たく言い放つ。
 本当は悔しくて、恥ずかしい。新人に企画をひっくり返されたんだから。

「……わかりました」

 朝倉が静かに引き下がる。
 足音が遠ざかっていく。

 私は、修正中の企画書をじっと見つめた。
 文字がぼやける。目が乾いているのか、それとも——
 違う。泣いてなんかいない。泣く理由なんてない。

 深呼吸をして、キーボードを叩き始めた。