元恋人と、今日から同僚です

 電車に乗り、席に座る。
 窓の外を見ながら、朝倉のことを考えていた。
 
 一緒に仕事をして、嫌じゃなかった。むしろ、楽しかった。
 優しくされて、嬉しかった。
 好きだと言われて、心臓が跳ねた。

 それは——何なんだろう。

 わからない。
 でも、答えを出さなきゃいけない時が、近づいている気がする。

 自分の気持ちと、ちゃんと向き合わないと。
 逃げるのは、もうやめないと。

 朝倉が「逃げない」なら、私も——

 電車が揺れる。
 窓の外、流れていく夜景はいつもより綺麗だった。
 その光を見ながら、私は静かに決意した。

 ——ちゃんと考えよう。

 自分の気持ちを誤魔化さずに。
 朝倉に対して、どう思っているのか。
 もう一度、一緒にいたいと思えるのか。

 答えを出すのは怖い。
 でも、朝倉の覚悟に、私も応えなきゃいけない。

 最寄り駅に着いて、電車を降りる。
 夜風が冷たくて、酔いが醒めていく。
 頭がクリアになるにつれて、朝倉の言葉が、より鮮明に蘇ってきた。

 「今度は、逃げない」

 その言葉を、何度も噛みしめながら、家への道を歩いた。