元恋人と、今日から同僚です

 打ち上げが終わり、みんなで店を出た。
 外の空気が冷たくて気持ちいい。酔いが少し醒める。

「大丈夫ですか?」

 朝倉が、さりげなく隣に来た。

「うん、大丈夫」
「送っていきます」
「……いい。一人で帰れる」
「本当に?」
「本当」

 強がりだ。本当は、送ってほしかった。
 でも、今の状態で二人きりになったら、何を言い出すかわからない。
 
 朝倉が真剣な表情で一言。

「真帆。ごめん」

 名前を呼ばれ、私は、ほろ酔いながらも現実に戻ってきた。

「何が?」
「酒のせいかな。喋りすぎた」
「……」

 一拍。

 朝倉は一つ息を吸うと、微笑んだ。

「じゃ!気をつけて」
「うん。朝倉も」

 みんなに手を振って、駅に向かう。
 振り返ると、朝倉がこちらを見ていた。
 目が合って、少しだけ手を振った。朝倉も、振り返してくれた。

 駅に着いて、ホームで電車を待つ。
 さっきの会話が、頭の中でリピートする。

 「俺は待ってるから」

 朝倉は、本気だ。
 五年も経って、まだ私のことを好きだと言ってくれている。

 私は、どうすればいいんだろう。

 好きかどうか、わからないと言い続けてきた。
 でも、本当にわからないんだろうか。
 わからないふりをして、逃げているだけなんじゃないだろうか。