元恋人と、今日から同僚です

 宴会が進み、席替えが始まった。
 気づくと、朝倉が隣に座っていた。

「……いつの間に」
「席、空いてたんで」

 嘘だ。さっきまで、宮本が座っていた。
 彼女がどこかに移動したから、朝倉が入ってきたんだ。
 宮本の仕業かもしれない。あの子なら、やりかねない。

「飲んでますか?」
「うん、ちょっとだけ」
「顔、赤いですよ?」
「……そう?」

 自分の頬に手を当てる。確かに、熱い気がする。
 あまり強くないのに、ビールを二杯飲んでしまった。

「結城さん、お酒弱かったですよね」
「……覚えてるの」
「忘れるわけないでしょ」

 朝倉が、少しだけ笑った。
 付き合っていた頃、何度か一緒に飲んだことがある。
 私はいつも先に酔って、朝倉に介抱されていた。

「今日は、ほどほどにした方がいいですよ」
「わかってる」
「本当に? さっき、三杯目頼もうとしてたでしょ」
「……見てたの」
「見てました」

 恥ずかしい。
 見られてたと言われると、なんだか照れる。

「お水、持ってきますね」
「いい、自分で——」
「いいから」

 朝倉が立ち上がり、カウンターの方へ行った。
 その背中を見ながら思った。
 世話を焼かれている。五年前と同じように。

 でも、今は嫌じゃない。
 むしろ、ありがたいと思っている自分がいる。

 五年前は、これが嫌だった。
 過保護だと思った。子供扱いされている気がした。
 でも今は、素直に受け取れる。年を取ったからだろうか。

 それとも、朝倉への見方が変わったからだろうか。

 たぶん、両方だ。
 五年という時間が、何かを変えてくれたんだと思う。