元恋人と、今日から同僚です

 居酒屋には、編集部のメンバーが十人ほど集まった。
 テーブルを囲んで、乾杯。ビールが美味しい。
 締め切り後の一杯は格別だ。

 藤堂さんが上機嫌で、今回の特集の出来を褒めてくれた。
 「レイアウトも良かったし、SNS企画のアイデアも新しかった。
 結城さん、朝倉くん、お疲れ様」

 名前を呼ばれて、軽く頭を下げる。
 朝倉も、照れくさそうに頷いていた。

 宮本が隣に来て、小声で言った。

 「真帆さん、朝倉さんと、いい感じになってきましたね」
 「……何の話かな」
 「とぼけても無駄ですよ。最近、雰囲気違いますから」

 何も言い返せず、ビールを煽るしかなかった。

「結城さん。今回の特集、大変だったでしょ」

 隣に座った田村さんが、話しかけてきた。

「まあ、色々ありましたね」
「メイン企画がダメになったって聞いたよ。よく間に合わせたね」
「朝倉さんのアイデアに助けられました」

 そう言うと、田村さんが意外そうな顔をした。

「へえ、朝倉くんが? やるじゃない」
「ええ、彼は優秀ですよ」
「最初の頃、ギクシャクしてるように見えたけど、最近は仲良くなった?」

 ギクシャク。
 周囲からは、そう見えていたんだろう。実際、そうだったし。

「……普通ですよ。仕事の関係です」
「ふーん」

 田村さんが、意味深に笑った。
 何か言いたそうだったけど、それ以上は聞いてこなかった。