元恋人と、今日から同僚です

「成長してないな、私」
「今日、ちゃんと謝ってくれたじゃないですか」
「謝るのは昔もやってたでしょ」
「でも、その場で謝ることは少なかったですよ。大体、次の日とか」

 言われてみれば、そうかもしれない。
 当時は、その場で素直になれなかった。
 意地を張って、後から謝ることが多かった。

「少しは、成長してるんじゃないですかね?」

 朝倉が、優しく笑った。
 その言葉に、少しだけ救われた。

「……ありがとう」
「どういたしまして」

 駅に着いた。
 改札の前で、立ち止まる。

「じゃあ、また月曜日」
「はい。週末、ゆっくり休んでください」
「朝倉もね」

 手を振って、別れる。
 改札を抜けながら、今日のことを振り返った。

 昔と同じ轍を踏んだ。
 でも、少しだけ違う結果になった。
 その場で謝れた。朝倉も、許してくれた。

 五年前と同じじゃない。
 少しずつ、変わっている。

 そう思いたかった。
 そう思わないと、やっていけなかった。

 電車に乗り、窓の外を見る。
 流れていく夜景。いつもと同じ風景。

 でも、今日は少しだけ違って見えた。
 朝倉と一緒に乗り越えた一日。ぶつかって、謝って、許してもらって。
 それが、嫌じゃなかった。

 むしろ、どこかで安心していた。

 ぶつかっても、大丈夫。
 そう思える相手がいるということが、どれだけ貴重か。
 今なら、少しだけわかる。

 窓に映る自分の顔を見ながら、思った。
 朝倉は、私にとって何なんだろう。
 元恋人。同僚。仕事のパートナー。

 ……やっぱり、わからない。

 でも、少しずつ答えに近づいている気がした。