元恋人と、今日から同僚です

 差し替え案が決まらないまま、昼休み。
 私は一人で給湯室に行き、缶コーヒーを開けた。

 頭を冷やさないと。
 朝倉の言う通り、焦っている。焦って、周りが見えなくなっている。
 昔と同じ。何も変わっていない。

 五年経って、大人になったつもりでいた。
 冷静に仕事ができるようになったと、思っていた。
 でも、追い詰められると、結局こうなる。

 周りに当たって、空気を悪くして、自分で自分の首を絞める。

「最悪……」

 呟いて、コーヒーを啜った。

 苦い。いつもより、ひどく苦かった。





 午後、再び会議室で話し合い。
 今度は、少し冷静になれた。

「さっきは、ごめん。言い方がきつかった」
「いえ、俺も感情的になりました」

 仕切り直し。
 ホワイトボードに、新しくアイデアを書き出す。

「ビフォーアフターの代わりに、何を入れるか」
「はい」
「読者参加型という軸は残したい。リアリティが大事だから」

 朝倉が頷く。

「じゃあ、SNSを使うのはどうですか」
「SNS?」

「読者に、自分のスキンケアルーティンを投稿してもらう。ハッシュタグを作って、それを誌面で紹介する」

 悪くない。むしろ、いい案かもしれない。
 SNSでの投稿なら、過去のものを使える。今から集める必要がない。
 ハッシュタグを設定すれば、特集との連動感も出る。

「……それ、いいかも」
「本当ですか」

 朝倉が、少し嬉しそうな顔をした。
 さっき全部却下したことを、根に持っていないらしい。
 その素直さが、ありがたかった。

「既存の投稿から、いい感じのを選んで使う。
 事前許可をもらって誌面に掲載。コメントも掲載すれば、リアルな声が伝わる」
「デザイン的にも、レイアウトしやすいと思います」
「うん。これでいこう」

 少しだけ肩の荷が下りた。