元恋人と、今日から同僚です

 午前中、私と朝倉で差し替え案を練った。
 会議室にこもり、ホワイトボードを前にアイデアを出し合う。

「読者アンケートを使うのはどうですかね。スキンケアの悩みを答える形で」
「アンケート、取る時間ある?」
「過去のデータを使えば、なんとか」

「でも、それだとリアルタイム感がないよね。
 今回の特集のために集めました、って感じが出ない」

 朝倉の提案を、私は却下した。
 悪い案じゃないけど、決め手に欠ける。

「じゃあ、専門家インタビューでは」
「今から専門家を押さえるの、難しいでしょ?」

「知り合いの皮膚科医に、当たってみますか」
「朝倉に知り合いの皮膚科医なんているの?」

「いえ、でも探せば——」
「時間がない」

 また、却下。
 朝倉の表情が、少しずつ曇っていく。

「結城さんは、どうしたいんですか?」
「それを考えてるんでしょ」

「俺の案、全部却下してますよね?」
「ダメな案だから却下してるの」

 言ってから、しまったと思った。
 きつい言い方だった。朝倉は、一生懸命考えてくれているのに。

「……ダメな案、ですか」

 朝倉の声が、低くなる。

「俺は、なんとかしようと思ってるんです。全部ダメじゃ何も言えない」

「ダメなものはダメって言わないと、前に進まないでしょ」
「言い方ってもんがありますよね?」

 空気が、ピリッと張り詰めた。
 朝倉の目が、真っ直ぐに私を見ている。
 怒っている、というより、悲しそうな目。

「結城さん、焦ってるのはわかりますけど、俺に当たらないでください」
「当たってなんか——」
「当たってます」

 遮られて、言葉が詰まった。

「昔も。追い詰められると、周りに当たる。俺はいつも、その矛先だった」

 胸を刺されたような気持ちになった。
 昔。五年前。
 確かに、そうだった。仕事がうまくいかない時、私は朝倉に当たっていた。
 八つ当たりだとわかっていても、止められなかった。

「ごめん」

 謝ると、朝倉は少し黙った。
 それから、深く息を吐いた。

「俺も、言いすぎました。すみません」

 お互いに謝る。

 ……空気は重いままだった。