元恋人と、今日から同僚です

 カフェを出たのは、八時過ぎだった。
 二時間近く話し込んでいた。

「送っていきますか?」
「大丈夫。駅まで一人で行ける」
「……そうですか」

 朝倉が、少し残念そうな顔をした。
 でも、それ以上は言わなかった。

「では、また明日。お疲れ様でした」
「うん。お疲れ様」

 別々の方向に歩き出す。
 数歩進んで、振り返った。朝倉も、同じタイミングで振り返っていた。

 目が合う。
 お互いに、少しだけ笑って、また歩き出した。

 私が次に振り返った時、朝倉の姿は見えなかった。

 駅に向かいながら、今日の会話を思い返す。
 五年前のこと。お互いの後悔。謝罪。
 胸の引っかかりが、少しだけ、ほどけた気がする。

 前に進めるのかどうか、まだわからない。
 でも、少なくとも、立ち止まったままではない。

 それだけで、今は十分だった。