元恋人と、今日から同僚です

 給湯室には、誰もいなかった。
 宮本がドアを閉め、こちらを向く。

「真帆さん」
「何?」
「朝倉さんと、いい感じじゃないですか」

 直球だった。
 心臓が跳ねる。

「……何の話?」
「さっき、見てたんです。二人で写真見ながら話してるところ。すごく自然でした」
「仕事だから。普通でしょ」
「普通じゃないですよ」

 宮本が一歩近づく。

「真帆さん、朝倉さんと話してる時、表情が柔らかいんです。
 他の人と仕事してる時と、全然違う」

 そうだろうか。
 自分では、わからない。わからないふりをしている、のかもしれない。

「仕事がうまくいってるから、機嫌がいいだけだよ」
「嘘」
「嘘じゃない」
「嘘です。真帆さん、嘘つくの下手ですから」

 言い返せなかった。
 宮本には昔から、私の嘘を見抜く。隠し事を……できる気がしない。

「別に、何もないよ。朝倉とは仕事だけ」
「本当に?」
「本当」

 自分でも、声に力がないのがわかった。

「真帆さん、前に言ってましたよね。朝倉さんは元彼だって」
「……言ったけど」
「で、告白されて、断ったって」
「そうだよ。だから……それは、もう終わった話」

 宮本が黙って、私の顔を見ている。
 その目が優しい。責めるんじゃなくて、心配している目だ。

「終わった話を、そんな顔でする人いないですよ」

 そんな顔? 私は今、どんな顔をしているんだろう。

「真帆さん、自分の気持ち、ちゃんとわかってますか?」
「……わかってるよ」
「じゃあ、朝倉さんのこと、どう思ってるんですか?」