元恋人と、今日から同僚です

 編集部に着いたのは、七時過ぎ。
 すでに定時を過ぎていて、残っている人は少なかった。

 私と朝倉は並んで座り、撮影した写真のセレクト作業を始めた。
 カメラマンから送られてきたデータを開き、使えるカットをピックアップしていく。

「この表情、いいですね」
「うん。目線がいい」
「こっちは?」
「光の当たり方がイマイチかな。もう一枚、似たアングルのがあるはず」

 画面を見ながら、意見を交わす。
 朝倉の選ぶ写真は、私の感覚と近かった。
 構図の好み、表情の良し悪し、アイテムの見え方。ズレが少ない。

 一緒に仕事をするのが、心地いい。
 そう感じている自分に気づいて、少し怖くなった。

「結城さん」

 声がして振り向くと、宮本が立っていた。
 いつの間に来たんだろう。気づかなかった。

「宮本。まだいたの」
「はい、原稿チェックが残ってて。……撮影、どうでしたか?」
「順調だったよ。今、写真をセレクトしてるとこ」

 宮本の視線が、私と朝倉を交互に見ている。
 何かを探るような目。嫌な予感がした。

「朝倉さんも、お疲れ様です」
「ありがとうございます」
「初めての撮影、大変だったでしょう?」
「いえ、結城さんに色々教えてもらって。勉強になりました」

 朝倉が丁寧に答える。
 宮本が、また私を見た。その目が、何か言いたそうにしている。

「真帆さん、ちょっといいですか」
「……今?」
「すぐ終わります。給湯室で」

 断れる雰囲気じゃなかった。
 朝倉に「ちょっと待ってて」と言い残し、宮本について給湯室に向かった。