元恋人と、今日から同僚です

 水曜日。

 私は朝倉と一緒に、撮影前の最終確認をしていた。

「小道具、全部揃った?」
「はい。スキンケアアイテムは昨日届きました。
 念のため、予備も用意してあります」

「予備?」
「撮影中に足りなくなったり、汚れたりする可能性があると思って。
 メーカーさんにお願いして、二セット借りてあります」

 予想以上の気配り。
 私は、予備のことまで指示していなかった。
 朝倉が自分で考えて、先回りしたのだ。

「......いい判断だね」
「ありがとうございます」

 朝倉が少しだけ笑った。
 仕事で褒められて嬉しい、そんな素直な笑顔。

 五年前と同じだった。

 胸の中がモヤモヤする。
 こういう顔を見ると、昔を思い出してしまう。




 木曜日。撮影日の前日。

 私と朝倉は、スタジオの下見に行った。
 都内にある小さな撮影スタジオ。
 白を基調とした清潔感のある空間で、美容系の撮影にはよく使われる場所だ。

「ここがメインの撮影スペース。照明は備え付けだけど、レフ板は持ち込み」
「了解です」

 朝倉がスタジオ内を見回しながら、メモを取る。

「控え室はあっち。モデルさんとヘアメイクさんが使う。あと、ここが機材置き場」
「荷物の搬入は、何時からできますか」
「撮影開始の二時間前から。朝八時に入れるように手配してある」

 朝倉が頷く。
 スタジオのスタッフと少し話をして、確認事項を済ませる。
 その間、私はぼんやりと朝倉の背中を見ていた。

 テキパキと動いている。