元恋人と、今日から同僚です

 定時を過ぎた頃、宮本が声をかけてきた。

「真帆さん、今日は飲みに行けます?」
「……ごめん、今日もちょっと」
「えー、また? もう何回断られたかわかんないですよ」

 申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
 でも、今日はホント無理だった。頭の中が、ぐちゃぐちゃだ。

「来週、絶対行くから」
「それ、先週も言ってましたよね」

 宮本が少し膨れた顔をする。でも、すぐに表情を和らげた。

「……朝倉さんと、何かあったんですか」
「何も——」
「同じ案件やることになったって、聞きましたよ?」

 情報が早い。編集部は狭い世界だ。

「……藤堂さんの指示だから、仕方ない」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫。仕事だから」

 宮本がじっと私の顔を見る。
 心配そうな目。後輩にこんな顔をさせている自分が、情けない。

「真帆さん、無理しないでくださいね」
「無理なんてしてないよ」
「してますよ。顔見ればわかります」

 そう言って、宮本は自分の席に戻っていった。

 無理……か。してるんだろうか。
 自分では、わからない。

 わからないふりをしている、だけ。なのかもしれないな。