元恋人と、今日から同僚です

 午後一時。会議室B。
 私と朝倉は、向かい合って座っていた。

 テーブルの上には、企画書と参考資料。
 特集の構成案、スケジュール、外部スタッフのリスト。
 仕事の話だけをすればいい。それ以外は、今は考えなくていい。

「まず、全体の流れを確認するね」

 私は企画書を広げた。

「特集は八ページ構成。
 導入でコンセプト説明、次にスキンケアの基本ステップ。
 それからアイテム紹介、最後に読者参加型のビフォーアフター企画」

「読者参加型?」
「実際に読者に十五分ケアを試してもらって、一ヶ月後の変化を追う。
 リアリティがあると、読者の反応がいいから」

 朝倉がメモを取る。真剣な目。
 仕事モードの朝倉は、昔から好きだった。

 ——いや、そういうことを考えるのはやめよう。

「撮影は来週の木曜日。モデルは事務所と調整中。
 ライターは田中さんにお願いしてある」

「田中さんというのは?」
「フリーのビューティライター。
 うちの美容記事は、だいたい彼女にお願いしてる」

 朝倉が頷く。

「俺は、何をすればいいですか?」
「まずは撮影の段取り。スタジオとの連絡、小道具の手配。
 それと、当日のスケジュール管理。
 あと、ライターさんとのやり取りも一部お願いするかも」

「わかりました」

 淡々としたやり取り。
 これでいい。これが、本来あるべき関係だ。
 教育係と新人。先輩と後輩。それ以上でも、それ以下でもない。