元恋人と、今日から同僚です

 席に戻ると、朝倉がこちらを見ていた。
 藤堂さんとの会話が聞こえていたのかもしれない。

 私は朝倉のデスクに向かった。周囲に聞こえないよう、小声で話しかける。

「藤堂さんから聞いた?」
「いえ、まだ何も」
「スキンケア特集、一緒にやることになった。あなたがサブ担当」

 朝倉の表情が、一瞬だけ動いた。
 驚きのような。それとも……

「……わかりました」
「仕事だから、ちゃんとやって。変に気を遣われるのは困るからね」
「わかってますよ。仕事は仕事ですから」

 朝倉の言葉は、どこか突き放したように聞こえた。
 一週間前までなら、もっと柔らかい言い方をしてた気がする。

 私が望んだ距離、私が作った壁。
 それを、朝倉は受け入れたということなのかもしれない。

「……じゃあ、午後イチで打ち合わせ。会議室B、押さえておいて」
「了解です」

 それだけ言って、私は自分の席に戻った。
 胸の奥に何かが引っかかっている。不満、ではない。
 納得感がないというか。
 なんで、こんな気持ちになるんだろう。

 望んでいた通りになっているのに。