金曜日の夜。
週末が目前に迫っている。
朝倉から「話したい」と言われてから、二日が経った。
私はまだ、返事をしていない。「考えとく」と言ったきり、避け続けている。
仕事は淡々とこなした。
教育係として必要な会話だけ交わし、それ以外は距離を取る。
朝倉も、あれ以上踏み込んでこなかった。
表面上は、平穏。
でも、心の中はぐちゃぐちゃだった。
定時を過ぎて、編集部の人が一人、また一人と帰っていく。
金曜の夜だ。みんな予定があるのだろう。
飲み会とか、デートとか、友人との食事とか。
私には、何もない。
家に帰って、一人で過ごすだけ。
「真帆さん、今日こそ飲みに行きません?」
宮本が声をかけてきた。
「……今日は、ちょっと」
「えー、また断るんですか。もう三回連続ですよ」
そうだった。宮本の誘いを、ずっと断り続けている。
一人になりたかった。誰かといると、余計なことを考えてしまう。
「ごめん。来週は絶対行くから」
「約束ですよ。破ったら怒りますからね」
宮本が少し膨れた顔をして、帰っていく。
申し訳ないとは思う。
でも、今は無理だった……
編集部に残っているのは、私と数人。
朝倉の姿は見えない。先に帰ったのだろう。
少しだけ、ほっとする。今日は顔を合わせずに済みそうだ。
パソコンに向かいながら、ぼんやりと考える。
五年前のこと。別れた日のこと。
◇
あの日、私たちは朝倉の部屋にいた。
社会人二年目の冬。付き合って三年が経とうとしていた頃。
きっかけは、些細な言い合いだった。
私が終電を逃して、タクシーで帰ったことを朝倉が咎めた。
身体を壊すと言った。もっと自分を大事にしろと。
私は反論した。仕事が大事なんだと。今が頑張り時なんだと。
「俺より仕事が大事なのか」
朝倉がそう言った。
週末が目前に迫っている。
朝倉から「話したい」と言われてから、二日が経った。
私はまだ、返事をしていない。「考えとく」と言ったきり、避け続けている。
仕事は淡々とこなした。
教育係として必要な会話だけ交わし、それ以外は距離を取る。
朝倉も、あれ以上踏み込んでこなかった。
表面上は、平穏。
でも、心の中はぐちゃぐちゃだった。
定時を過ぎて、編集部の人が一人、また一人と帰っていく。
金曜の夜だ。みんな予定があるのだろう。
飲み会とか、デートとか、友人との食事とか。
私には、何もない。
家に帰って、一人で過ごすだけ。
「真帆さん、今日こそ飲みに行きません?」
宮本が声をかけてきた。
「……今日は、ちょっと」
「えー、また断るんですか。もう三回連続ですよ」
そうだった。宮本の誘いを、ずっと断り続けている。
一人になりたかった。誰かといると、余計なことを考えてしまう。
「ごめん。来週は絶対行くから」
「約束ですよ。破ったら怒りますからね」
宮本が少し膨れた顔をして、帰っていく。
申し訳ないとは思う。
でも、今は無理だった……
編集部に残っているのは、私と数人。
朝倉の姿は見えない。先に帰ったのだろう。
少しだけ、ほっとする。今日は顔を合わせずに済みそうだ。
パソコンに向かいながら、ぼんやりと考える。
五年前のこと。別れた日のこと。
◇
あの日、私たちは朝倉の部屋にいた。
社会人二年目の冬。付き合って三年が経とうとしていた頃。
きっかけは、些細な言い合いだった。
私が終電を逃して、タクシーで帰ったことを朝倉が咎めた。
身体を壊すと言った。もっと自分を大事にしろと。
私は反論した。仕事が大事なんだと。今が頑張り時なんだと。
「俺より仕事が大事なのか」
朝倉がそう言った。
