元恋人と、今日から同僚です

 辛そう。
 そう見えているのか。隠しているつもりだったのに。

「……元彼」

 口に出した瞬間、喉と胸がぎゅっと締まった。

「元彼? 朝倉さんが?」
「……そう」

 宮本の目が大きくなる。

「五年前に別れたのよ。それっきり連絡も取ってなかったのに、いきなり同じ部署に異動してきて……」

 言葉にすると、状況のひどさが改めてわかる。
 運が悪いにもほどがある。
 いや、もうこれは運じゃなくて呪いなのかもしれない。

「……それは、きついですね」
「きついよ。毎日、胃が痛いんだから……」

 宮本が黙って、私の顔を見ていた。
 責めるでも、同情するでもない。ただ、聞いている。そんな目だった。

「別れた理由は?」
「価値観の違い、かな。将来のこととか、仕事のこととか。色々」

 曖昧な言い方になる。
 本当の理由は、自分でもよくわかっていない。考えたくないのかもしれない。

「今は、どう思ってるんですか?」
「どう、って?」
「朝倉さんのこと。まだ好きとか、嫌いとか」

 ストレートな質問に、言葉が詰まる。

「……わからない」

 正直に答えた。

「好きかどうかはわからない。ただ、顔を見ると落ち着かない。
 声を聞くと、心臓がうるさくなる。
 それが好きってことなのか、ただ動揺してるだけなのか」

 宮本が小さく頷く。

「それ、たぶん好きですよ」
「……根拠は?」
「嫌いな人に、そんな反応しないです」