元恋人と、今日から同僚です

 屋上を出て、一緒に帰る。
 いつもの帰り道。いつもの会話。いつもの歩幅。

 最悪の再会、最悪な運命だと思った。
 でも、今は違う。

 この再会こそ、運命だったのかもしれない。
 五年前に別れて、また一緒にいる。

「ねえ、朝倉」
「ん?」
「ありがとう」
「急に何?」
「いや、なんか言いたくなって」

 朝倉が、不思議そうな顔をした。

「真帆のおかげで、俺は変われた。昔の失敗を、活かせてる」
「私も。朝倉のおかげで、変われた」

 二人で、駅に向かって歩く。
 手を繋いで、急がず、ゆっくりと。

 五年前の私たちは、ここにはいない。
 今の私たちがいる。更新された、新しい関係。

 これからも、きっとうまくいかないことがある。
 すれ違うことも、ぶつかることも、傷つけ合うこともあると思う。

 でも、大丈夫。
 ちゃんと話し合って、言葉にして、向き合っていける。
 そう思える相手が、隣にいるから。

 駅に着いて、改札の前で立ち止まる。

「じゃあ、また明日」
「うん。おやすみ」

 手を振って、別れようとした。
 朝倉が、私の腕を掴んだ。

 真っ直ぐな目。心臓が跳ねる。

「好きだ」
「……私も」

一呼吸。

「好きだよ、恒一」

 恒一が、目を丸くした。

「真帆、名前……」
「だめ?」

 彼は嬉しそうに笑った。

「だめな訳ないだろ?」

 その言葉を聞いた瞬間。
 私は恒一に抱きついていた。

 昔の私なら人目のあるところで、こんなことはしなかった。
 したこともない。しようともしなかった。

 でも、考えるより先に動いていた。