元恋人と、今日から同僚です

「なあ、真帆」
「何?」
「俺たち、これからどうなると思う?」

 朝倉が、少し緊張した顔で聞いてきた。

「どうなるって?」
「将来のこと。結婚とか、そういうの」

 結婚。その言葉に、心臓が跳ねた。

「……まだ早くない? 付き合って、二ヶ月だよ」
「知ってる。でも、俺は考えてるんだ」
「……」
「真帆と、ずっと一緒にいたい。いつか、結婚したい。そう思ってる」

 朝倉の目が、真剣だった。

「今すぐじゃなくていい。でも、そういう未来も考えてほしい」
「……」
「重いかな」
「……重い」

 正直に言った。

「でも、私も、考えてるから」
「本当?」
「うん」

 朝倉が、少し驚いた顔をした。

「真帆も?」
「うん。朝倉と、長く一緒にいたいって思ってる。将来のことも、考えてる」
「……」
「でも、まだ早い。もう少し、今を大事にしていたい」

 朝倉が、ゆっくりと頷いた。

「わかった。急がないよ」
「うん」
「でも、いつか。その話をしよう」
「うん。する」

 二人で、空を見上げた。
 夏の夜空。星が、少しだけ見える。

「俺たち、大丈夫だよな?」

 朝倉が、ぽつりと言った。

「大丈夫」
「根拠は?」
「ない。でも、大丈夫な気がする」

 朝倉が、笑った。

「その言葉、好きだな」
「何が?」

「『根拠はないけど、大丈夫な気がする』。真帆らしくて、いい」
「……馬鹿にしてる?」
「ははは。褒めてるよ」

 つられて、私も笑った。