元恋人と、今日から同僚です

 昼休み、宮本と一緒に近くのカフェに行った。
 ここ数日、宮本がしつこく誘ってくるので根負けしてしまったのだ。

「真帆さん、ちゃんと食べてます?」
「食べてるよ」
「嘘。また痩せたでしょ」

 ベルトの穴が一つ変わった。ストレスで食欲が落ちているのは自覚している。
 私の体型まで把握してるのか、この子は。

「……ダイエット成功ってことで」
「笑えないですよ、それ」

 宮本がパスタを巻きながら、ちらりと私を見る。

「あの、聞いていいですか」
「何を?」
「朝倉さんのこと」

 フォークを持つ手が、一瞬止まる。

「……何?」
「編集部で、ちょっと噂になってるんです」

 噂。その言葉に胃のあたりが重くなる。

「どんな」
「結城さんと朝倉さん、なんか変だよねって。仲悪いのかなって」

 仲が悪い。そう見られているのか。
 それも当然かもしれない。私が露骨に避けているんだから。

「別に、仲悪くはないよ」
「でも、他の人と接する時と全然違うじゃないですか。朝倉さんにだけ、すごく冷たい」

 図星だった。鋭い。胸にグサッときた。
 自分でもわかっている。朝倉にだけ、私は過剰に距離を取っている。
 それが周囲から見て、不自然なのは当たり前だ。

「……気をつける」
「気をつけるって、そういう問題じゃなくて、ですね……」

 宮本が少し身を乗り出す。

「何かあったんでしょ?
 昔の知り合いって言ってましたけど、それだけじゃないですよね?」

 またもや鋭い。この子……心が読めるの?
 私は、サラダをつついていた手を止めた。

「……聞いて、どうするの」
「どうもしないです。ただ、真帆さんが辛そうだから」