元恋人と、今日から同僚です

 ドアに手をかけた時、後ろから力強く抱きしめられた。
 
「はぁ、また言葉が足りないか。ダメだな俺は」

 朝倉が、背後で静かに呟く。

「俺は、やり直しとは思ってない」
「……どういうこと?」
「五年前の俺たちと、今の俺たちは、別物だと思ってる」

 彼の深呼吸が聞こえた。

「五年前は、お互いに未熟だった。言葉が足りなくて、すれ違って、別れた」
「今みたいにな」

「……うん」
「でも、今は違う。五年間で、お互いに成長した。学んだ。変わったことがある」

 朝倉は、私を振り向かせ、向かい合った。

「だから、やり直しじゃなくて、更新」
「更新?」

「そう。五年前をベースに、新しい関係を作ってる。
 今なら、言葉で気持ちを。伝えられる」

「真帆が逃げた時、何もしなかった、昔の俺じゃない」

 沈黙。

「五年前の失敗は、消えない。それがあって、今の俺たちがある。
 だから、リプレイじゃなくて、アップデートだ」
「……うん」

「ごめんな」
「私こそ。また、頭に血が上っちゃった」
「いや、俺の言葉が足りなかった」

 朝倉は苦笑いしている。

 確かに、そうかもしれない。
 私たちは、五年前に戻ったわけじゃない。

 五年前、その後の経験があって、新しい関係を築いている。
 同じ失敗を繰り返さないように。
 ちゃんと言葉にして、話し合って、想い合う。

 そう。やり直しじゃない。更新だ。