元恋人と、今日から同僚です

 カフェを出て、駅に向かって歩いた。
 空がオレンジ色に染まっている。

「なあ、真帆」
「何」
「俺、伝えたいことがあるんだ」

 朝倉が、立ち止まった。
 私も、足を止める。

「改まって何」
「いや、ちゃんと言葉にしたくて」

 朝倉が、私の手を取った。
 両手で、包み込むように。

「俺、真帆のことが好きだ」
「……知ってる」
「うん、知ってると思う。でも、ちゃんと言いたい」

 朝倉の目が、真っ直ぐに私を見ている。

「五年前は、言葉が足りなかった。だから、すれ違った」
「……」
「今は違う。思ってることは、ちゃんと言葉にする。何度でも」

 朝倉が、深呼吸した。

「真帆のことが、好きだ。一緒にいると、幸せだ。これからも、ずっと一緒にいたい」
「……」
「仕事が忙しくても、すれ違うことがあっても、俺は真帆のそばにいたい」

 胸が、ぎゅっと締まった。
 涙が出そうになった。

「……」
「俺の気持ち、伝わってる?」

 朝倉の声が、少し震えていた。
 緊張している。こんなに真剣に想いを伝えてくれている。

「……伝わってる」

 小さな声で、答えた。

「私も、朝倉のことが好き。一緒にいると、幸せ。これからも、ずっと一緒にいたい」
「……」
「言葉が足りなかったのは、私も同じ。だから、私もちゃんと言う」

 深呼吸して、朝倉の目を見た。

「朝倉のこと、大切にする。傷つけそうになったら、ちゃんと話し合う」
「……うん」
「逃げない。ちゃんと向き合う。それが、私の約束」

 朝倉が、私の手を強く握った。

「ありがとう。嬉しい」
「私も」

 二人で、夕暮れの中、向かい合った。
 周囲には、通行人がいる。でも、気にならなかった。

「これからも、よろしく」
「うん。よろしくね」

 朝倉が、私を引き寄せて、抱きしめた。
 驚いたけど、嫌じゃなかった。温かくて、安心した。

「好きだ」
「……私も」

 二人で抱き合った。
 五年越しの再会。五年越しの想い。

 オレンジ色の空が紫に染まっていく。

 やっと、ここまで来れた。