元恋人と、今日から同僚です

 定時後、朝倉と一緒に帰った。
 もう隠す必要がないから、普通に二人で歩ける。

「今日は、色々あったね」
「うん。みんなに知られてて、びっくりした」
「俺も。でも、よかったよ。隠すの、しんどかったし」

 朝倉が、私の手を握った。
 人目を気にしなくていい。それだけで、こんなに楽になる。

「これからは、堂々としてられるね」
「うん。でも、イチャイチャはしないよ。職場だから」
「わかってるよ。仕事中は、ちゃんとする」

 朝倉が、笑った。

「でも、帰り道くらいはいいでしょ」
「まあ、それくらいなら」

 二人で、手を繋いで歩いた。
 夕暮れの街。帰宅する人たち。普通の風景。
 その中を、二人で歩く。

 朝倉が、ぽつりと言った。

「幸せだな」
「……急に何?」
「いや、なんかふと思って。こうやって、真帆と一緒に歩けるのが、幸せだなって」
「……」
「五年前は、できなかったから」

 あの頃は、一緒に帰ることすら難しかった。
 私がいつも遅くまで働いていたから。

「今は、真帆と一緒に歩ける」
「うん」

 駅に着いて、改札の前で立ち止まる。

「じゃあ、また明日」

 手を振って、別れる。
 改札を抜けながら、振り返った。
 朝倉も、こちらを見ていた。目が合って、お互いに笑った。

 みんなに認められた。
 堂々としていられる。
 それが、こんなに嬉しいことだとは。

 窓に流れる夜景は、優しく瞬いている。

 私は、幸せを噛みしめていた。