元恋人と、今日から同僚です

 藤堂さんとの会話の後、田村さんが話しかけてきた。

「結城さん、藤堂さんに何か言われた?」
「……はい、ちょっと」
「朝倉くんのことでしょ」

 やっぱり、みんな知っているらしい。

「最初から気づいてたわよ、私。二人の間に、何かあるなって」
「……そうですか」
「だって、結城さん、朝倉くんにだけ態度が違ったもの。
 最初は冷たくて、途中からなんか気まずそうで、最近はラブラブで」

 ラブラブ。
 その言葉に、顔が熱くなった。

「別に、ラブラブでは——」
「いいじゃない、若いんだから。楽しみなさいよ」

 田村さんが、ウィンクした。
 若干、ぎこちないのは言わないでおく。

「応援してるから。何かあったら、相談してね」
「……ありがとうございます」

 編集部の人たちは、思った以上に温かかった。
 職場恋愛って、もっと白い目で見られるものだと思っていた。
 でも、そうじゃなかった。

 みんな、普通に受け入れてくれている。





 昼休み、朝倉と一緒に近くのカフェに行った。
 もう隠す必要がないから、堂々と二人で出かけられる。

「今日、藤堂さんに言われた」
「何を」
「朝倉と付き合ってるのかって」
「……え、バレてたの?」

 朝倉が、驚いた顔をした。

「バレバレだったみたい。みんな知ってたって」
「マジか。俺、うまく隠せてると思ってたのに」
「私も」

 二人で、苦笑した。

「藤堂さん、何て言ってた」
「応援してるって。仕事に影響がなければ、いいって」
「よかった。怒られるかと思った……」
「私も」

 ほっとした空気が、二人の間に流れた。

「これで、堂々としてられるね」
「うん。隠すの、疲れるし」
「俺も。顔に出さないように気をつけてたけど、無駄だったみたいだな」

 朝倉が、コーヒーを啜りながら言った。

「でも、嬉しいな。みんなに認められてるみたいで」
「私も」

 認められている。
 その感覚が、心地よかった。

 五年前、私は誰にも、何も言わずに付き合っていた。
 彼氏なんていないことにしていた。
 でも、今は違う。みんなに知られて、認められて、応援されている。

 それが、こんなに嬉しいことだとは思わなかった。