元恋人と、今日から同僚です

 最寄り駅に着いて、朝倉も一緒に降りた。
 家の近くまで送ってくれるつもりらしい。

「ここまででいいよ」
「家の前まで送る」
「いいってば。恥ずかしいから」
「恥ずかしい? 何が?」
「……何となく」

 朝倉が、少し笑った。

「わかった。じゃあ、ここで」
「うん。ありがとう、今日は」
「いいよ。また明日」

 手を振って、別れようとした。
 その時、朝倉が私の手を掴んだ。

「真帆」
「何」
「俺、決めたことがあるんだ」
「……何を」
「真帆が頑張ってる間、俺も頑張る。仕事で、真帆に負けないくらい」

 朝倉の目が、真剣だった。

「真帆だけが頑張ってるんじゃなくて、二人とも頑張る」
「……」
「だから、俺は俺で、真帆は真帆で、頑張る。で、二人とも疲れたら、一緒に休む」

 その言葉が、胸に響いた。
 一緒に頑張る。一緒に休む。

 それが、本当のパートナーなのかもしれない。

「私も、逃げないって決めた」

 気づいたら、そう言っていた。

「辛くなっても、朝倉から逃げない。ちゃんと話す。ちゃんと伝える」
「……」
「五年前みたいにならない。今度こそ、ちゃんとやる」

 朝倉が、私の手を強く握った。

「一緒に頑張ろう」
「うん」

 夜道で、手を握り合った。
 寒い夜だったけど、朝倉の手は温かかった。

 逃げないと決めた。

 今度こそ、本気で。