「百は恋愛沙汰、ないの?」
急に私に話を振ってくるユカの興味津々な笑顔に申し訳ないけど。
「本当にないよ」
「何それ。つまんない」
断言すると表情がころっと変わり、呆れたようにため息をつかれる。
ユカは恋愛で色々あったと言う割にそう言う話が大好物らしくよく訊いてくる。恋愛なんてまともにしたことないし、そもそも、あまり自分のこととして考えられない。
自分でも認めるほど、つまらない人間だ。
「こーんなにもてるクセに。もったいないよね」
両手を大きく広げるユカを見て苦笑した。
それ、私がユカに対して一番思っていることと一緒。
きゃあきゃあと控えめに騒いでいると、急に教室の入り口のほうで黄色い歓声が聞こえた。数名の女子の声だと思う。思わず視線を向けるとやっぱり女子たちが口元を押さえたり、キョロキョロしたり。
盛り上がり方がすごく、何かあったのかと思っていると教室に入ってきたのは1人の黒髪の男子だった。
学年全体では人が多いためクラス替えでも見覚えがない同級生が多いけど。そのせいで当然、その男子も初めて見る人だ。
「誰?」
あまりに声をかけられているから小声でユカに呼びかけて、人だかりの方を指さすと彼女はああ、と納得した様子で口を開いた。
「知らないの? 外薗 壱生くんだよ」
「ほかぞの?」
珍しい名字に聞き覚えがなく首を傾げる。
「信じられない。百、あんたもっと人に興味持ったほうがいいよ」
ユカの言葉に軽くショックを受けてしまった。
私のこと言えないくらい人に興味がないユカがそう言う程、私も同じらしい。確かに知らない私も悪いのかもしれないけど……、そんなに有名な人なんだ。



