「あ、」
真新しい季節、進級の季節。
人だかりの中からきゃあきゃあ騒ぐ声に眼を細める。
今日から高校2年生。
春。クラス替え。
誰と一緒かな、慣れるかな、そんな期待が聞こえてきそうな表情の同級生たちは見渡す限り、掲示板に貼り出されたクラス表を凝視している。
かくいう私も気にならない訳ではないから、自慢の視力を活かして自分の名前を静かに探す。
2年2組、槙田 百。
自分の名前を見つけて安堵。
なんとか離脱して昇降口に向かった。
⸝⋆⸝⋆
⸝⋆⸝⋆
「おはよ、百」
新しい教室に入ると見慣れた友人が待っていた。
「ユカ。早いね、おはよう」
「暇すぎて」
困ったように笑顔を浮かべた彼女は付近の椅子に腰を下ろして、机にバッグを置いた。明らかに自分の席ではないけど。でもそんな奔放さがいつも通りで安心すらしてしまう。
彼女は砂原 ゆゆ香。学年で一番可愛いと噂の女の子。
付き合いは中学3年、通っていた塾からで。私は彼女を”ユカ”と呼んでいる。
「髪、変えた?」
「そー。似合う?」
「もちろん」



