「朝から元気だね」
「うん。それはそれで、これはこれだよ」
「どういう?」
不遜な態度でも似合ってしまっている彼女はまじめな顔だけど、機嫌がいいことはすぐにわかる。眉のところで揃えられた前髪から覗く大きな瞳が物語ってるから。
苦笑しているとユカはしゃがみ込んで机の上に腕を置いた。
その上に顎を乗せてにこにこしている姿はやっぱり機嫌がいい。
「あ、そっか。今日デートだもんね」
ふと思い出しユカの頭を撫でる。
「楽しんできてね」
「ありがとー」
微笑んだ彼女は本当に可愛くてさらに撫でてしまう。
こういうことすると普段なら怒るけれど、今は許してくれるらしい。
他校の彼とは今いい感じだし今日のうちに進展するかな、ユカの話を聞くのが楽しみで私も思わず笑みが零れる。
しばらくそうしていると、賑やかな教室がさらに騒がしくなる。視線を上げたユカに倣うように顔を上げると、どうやら人気者の彼が登校してきたようだった。
「今日もすごいね」
ユカが静かにそういうから同意の意味で頷く。
教室に足を踏み入れた外薗はいろんなひとに挨拶されて笑顔を返している。昨日だけでも慣れてしまった微笑みは、いつでも変わらず浮かんでいて。
「ユカ、珍しいよね。興味持つなんて」
「え、違うよ」
昨日から思っていたことを口にすると、彼女は心外とばかりに私を指さした。
「興味じゃなくて、慣れてないだけ」
だから誤解ね。
そう言ったユカに苦笑する。
べつに何も言ってないけど、ユカにはちょっとしたこだわりがあるから私もそれ以上言及する気はない。なんだかんだドライなこの子でも恋に振り回される可愛さが、やっぱり変わらなくて可愛い。
怒られないうちにまた頭を指先でつつくと、大きな瞳で睨まれて、怯んだふりで謝罪の言葉を零す。
「おはよう、砂原さん、槙田さん」



