ゆらめく君




歯切れのわるい外薗は、歩き始めた私に追いつくように早歩きで隣に並んだ。


駅までそこまで距離はないけれど同じ学校の生徒は多く、なんだか視線を多く感じる。ああ、そうだった、彼はものすごくもてる。
やっぱりこの注目のなか過ごすなんて、もてるって大変だ。


駅に着くと思ったより人が多く、帰宅に急ぐ人たちで溢れていた。目の前を交差していく人混みを避けながら歩く彼の後ろをついていけば、なんとか改札口にたどり着けそう。


改札を抜けると、やっと人混みがまばらになる。
すると前を歩いていた彼が急に振り返った。



「槙田さん、槙田さん。あのさ、」



ずっと何か言いたそうな眼を揺らがせて、結んだ口をひらくその表情。



「ずっと気になってたんだけど、」



黙って見ていると彼は目を逸らして手で口元を隠す。
そのせいで聞き取りにくくなってしまい、首を傾げると聞き慣れた音がホームの方から響いた。


はっと意識がシフトし、気持ちが急く。
この時間の電車はやたら混んでいるから、乗らないと帰れない。



「電車きたし、急ごう」



いまだに何か言いたげな外薗にそう言うと彼は困りながらも笑顔を浮かべた。



「そういえば」

「ん?」

「同じ電車なの?」

「今更だね、槙田さん」





⸝⋆⸝⋆
⸝⋆⸝⋆

翌日、流石に昨日の高揚感とかはなく、日常的だった。
学校に着くと靴を履き替えて廊下に向かう。


だけど。



「うん?」



なんか、賑やか、かもしれない。
ざわざわと浮き足立っているというか、なんというか。


確かに環境が変わったばかりだし落ち着きがないのは私も同じだし。昨日の書類云々、やらかしを思い出しながら歩いているといつの間にか教室についていた。



「あっ、」



教室の入り口にいた女子が私に気づいた様子で凝視してくる。
顔を上げると目が合ってしまったから、無視するわけにもいかず「おはよう」とだけ返した。


足を踏み入れた瞬間の賑やかさは変わりなく。自分の席に向かい、荷物の整理をする。今日からしっかり授業があるから教科書が多くて肩が痛い。


軽く肩を押さえながら椅子に腰を下ろした。
ぼうっとSNSをテキトーにチェックして時間を潰していると、目の前に影が落ちてくる。



「おはよ、百」



顔を上げればまじめな表情のユカが仁王立ちしていた。