今日はなんだか平常心じゃないみたい。
頷いたあと、すぐに訂正しようと思ったのに、笑顔を向けられるとおとなしく廊下を歩くほかなかった。
なんでこんな状況に、なんて悲観的になるけど。結局自業自得だし、あまりに自分が短絡的で思慮不足だということを思い知って心臓は相変わらずうるさい。
それに彼も彼だ。
一緒に帰る理由がわからない。
「槙田さんは帰り、電車?」
「あ、うん。そうだけど」
「俺もなんだ」
階段を降りながら他愛のない会話を続けて、意外と静かに話す彼の声色。勝手な偏見だけど、もっと賑やかに話すひとなんだと思っていた。
昇降口で靴を履き替えて外に出ると、先程より沈みかけている夕陽がいっそう目に入ってきて、部活生の声もまばらになっている。そろそろ下校の時間らしい。
珍しい光景に、慣れない彼。
続く他愛ない会話で、校門を通りすぎた。
「そういえば、」
思い出したかのような物言いに彼を見上げる。
「なんで教室に来たの?」
風で彼の黒髪がさらりと揺れて、長い下まつ毛が影を作る。
口端を少し上げて微笑む表情はこの短時間で見慣れてしまった。
「用、なかったんだけど。たまたま来たら現場だった」
「現場って」
ふふ、と控えめな笑い声を零す外薗は口元を手で押さえる。
なんとなく目を逸らして続けた。
「もてるって大変そう」
ユカに限らずこのひとにも思う。もてるってきっと大変だ。
何していても注目されるし、噂の的だし、恋愛は難しそうだし。私がユカと過ごして数年、ずっと思っていたこと。
私はユカの話を聞いているだけで正直お腹いっぱい。
あんなに目まぐるしいくらい振り回されるところを見て、望んで恋愛沙汰に足を突っ込む気にはなれなかった。
「それ、槙田さんが言うの」
「うん?」
急に立ち止まって言葉を継いだ彼に、私も思わず足を止めて振り向く。
「なに?」
「え、や、べつに」



