昼間、あんなに賑やかだった廊下に人気はなく、歩くだけで孤独を感じる。
窓から見える夕陽をぼんやり眺めながら歩き、思考は今日の夕飯にシフトしていった。
昨日は何を食べたかな。冷蔵庫、何残ってたかな。
主婦のようなことを考えながら廊下を歩くなんて今までなかったこと。
いつの間にか2年生のクラスが並ぶ廊下を通りがかっていた。
陽がチカチカと目に入りなんとなく目を細める。せっかくきたことだし、少し自分のロッカーでも整理しよう。
そう思い立った私は自分のクラスを目指した。
2組、2組…、あった。
まだ見慣れないような心地で、教室の引き戸を開ける。
ガラッ、と少し軋むような音が響き、教室に足を踏み入れ、
「えっ、」
た、私は、その声に顔をあげた。
「…あ」
瞬時に思考が止まる。
いま、一番危険な場所に来てしまったかもしれない。
誰もいないはずの教室、なのに。
そこにいたのは今日はじめて存在を認識することとなった彼だった。
「ま、槙田さん、」
引き攣ったような笑顔にとりあえす頷く。
気まずそうに口をひらこうとする外薗 壱生に本日二度目の罪悪感が募る。なんだか、とにかく私も何も言えないほど、微妙な空気にしてしまった。
なぜかというと、外薗 壱生の目の前には1人の女の子がいて。
その子は顔を覆って泣いていたからだ。
「えと、その」
早くこの場から去ろうと後ずさる。
その瞬間に女の子が私の方に走ってきた。
入り口から避けると、隣を駆けて行ったポニーテールが揺れて。私が元きた廊下を忙しく走り去っていく。
後ろ姿をなんとなく見送ることになり、書類を提出し忘れたと焦っていた時と比べものにならないほど心臓がばくばくと音を立てた。
台無しに、しちゃったんだと思う、私が。
今日は厄日なんかじゃなく、なにからなにまで裏目に出る、というか。他責にしている場合じゃないけど、ぐるぐる巡る思考に頭を抱えた。
「あの、槙田さん」
途端に動けなくなっていた私を遠慮がちに呼ぶ声に、気づかれないように息を吐いて。平静を繕いながら顔を向ける。
「ごめん、邪魔して」



