腐女子なのでBLゲームの脇役に転生したのに、なぜか主人公もろとも巻き込んだ逆ハー展開が始まって鬱です!



「ななななな……菜花ちゃんっっ!?」


彼の表情は見えないけれど、その声色からこの上ない動揺が見て取れる。



「夕璃、経緯はわからないけど、大好きな推しのあなたに触れることが叶うなんて、夢みたい!」


「え!?な、菜花ちゃん、なに言って……!ほ、本当に一体どうしちゃったの……?」



ようやく体を離したあたしは、それでも超至近距離を維持したまま、感動で涙ぐむ視界の先に、愛しくて尊くてたまらなかった彼を捉える。


これでもかというほど、耳まで真っ赤に染め上げた純情な美少年の姿がそこにはあった。



(か、可愛い……。可愛すぎるよ、夕璃……)



彼は、“前の”あたしが、人知れず寝る間も惜しんで打ち込んだ、麗しのBLゲーム――


その名も、『10⁻⁹ HOLIC(ナノホリック)』のピュアで優しい主人公、その人だったのだ。



そしてあたし、佐々宮菜花は、そのゲームで脇役として登場する、夕璃の幼なじみの女の子キャラ。



ああ、そこまで状況が理解できたところで、なんだか色々なものが蘇ってきた気がする。


そう、確かあたしは、普通の社会人として平凡な毎日を送っていた前世で、大好きなBLゲームの最終局面を目前として帰路を急いでいた仕事帰り、最低最悪なタイミングで起きたトラックの事故に巻き込まれて敢えなくその短すぎる生涯を終えた、不遇のOLだった。


意識が途切れた後、どこまでも何もない真っ白な世界で、あたしの魂に向かってそっと耳打ちするように、誰かの淡い声が聞こえて――。



《あなたに、輪廻転生のチャンスを授けましょう》

《そうですね、転生先として近年若い女性の魂に人気の乙女ゲームの世界へ……》


そう提案されて、その声の主がその言葉を言い終えるその前に、あたしは迷わずそれを遮って心の限り叫んだ。


「嫌です!!!!」


《は……?》


「あたし、乙女ゲーのヒロインとか、そういうのは全く興味ないので!!
どうせ生まれ変わらせてくれるなら、推し同士の甘い絡みを存分に、合法的に、特等席で鑑賞できる……ナノホリの脇役幼なじみキャラとかでお願いします!!」