ふらないで。

 突然ですが、私には好きな人がいます。
 2年生のときから、ずっと想い続けています。
 ぱちぱち弾ける泡みたいに軽くて、綺麗で、強い人です。多分、いや、100%、永遠の片思いです。いままでも、これからも、ずっと嫌いになれないと思います。
 こんな気の弱い私が、告白できるはずもなく…。
 ずっとずーっと、誰にも言わず、心の内側で想いを募らせていました。
 でも、それだけじゃ駄目だと思いました。だって、再来年には、私達はここを卒業して別れるんですから。
 あの人と別れるだなんて、私が耐えられるわけがありません。
 2か月くらい前にもそう思って、ラブレターを書こうとしたことがありました。
 心の中ではいくらでも断片が浮かんでくるのですが、いざ書こうとしてみると言葉に詰まってしまうのです。
 どうしても納得のいく文章にできず、結局諦めてしまいました。
 第一、私は国語が大の苦手なのです。
 なので、今日も私は大好きなメロンソーダを片手に、告白の仕方を延々と悩んでいるのです。
 ああ、ここはどこかって?佐倉高校です。私は佐倉高校2年の、月城つむぎです。
 上手く恋文も紡げないのに、なんでこんな名前なのでしょう…と、時々思ってしまいます。
「おー、つむぎ、おはよ。…まーた悩んでんの?」
「おはようございます!いい案が全く浮かんでこないんですよね」
 こちらは折倉しの。幼馴染で、頼れる私の大親友です。
 なんと前の席替えで、席が隣になったんですよね。運が良かったです。国語の授業も、なんとかやっていけそうです。
「つむぎも一途だなー。しっかし、違う人にいいなってなんないのー?」
「まさかまさか!私は黒川さんを好きになっちゃったんですから。しのは好きな人はまだできてないんですか?」
 しのはいつも通りにこりと笑うだけ。何も答えてくれませんが、長年の付き合い、まだできていないということがわかります。
 しかし、朝の日差しは気持ちいいですね。
 眠たくなりそうです。しっかりと意識していても、うとうとしてしまいます。
 すると、教室のドアががらがらがらと音を立てました。

 びくっと、心が跳ねます。

 うとうとしていたのに、急に意識が呼び戻されて心臓が音を立てて…。
「はよーざいまーす」
 きた!と、心が喜びます。
 黒川すずりさん。私の好きな人です。
 長めでサラサラな黒髪無造作ウルフカット、少しタレ気味の大きなぱっちりとした目。しゅっと通った鼻筋、少し気だるそうな歩き方。
 胸の奥が、小さくきゅんとしました。
 しゅわしゅわと炭酸のような繊細な感情が立ち上ります。
 残念なことに、彼の席は私のみっつくらい斜め後ろなんです。
 前なら、ずっと眺められたのに…と、我ながら気持ち悪いことを想像してしまいます。けれど、それくらい好きなんです。