ミラー☆みらくる!

「こ、これって……」

 入れ替わった時と同じ光だ!
 もしかして、【鏡の部屋】に戻るの?
 あまりの眩さに目が開けていられなくて瞼を閉じてしばらくすると、光がおさまったであろう気配を感じた。

 そうだよね。もともとわたしの世界じゃないんだもん。
 一日だけでも経験出来て楽しかった。うん。

 さみしさを感じながらも、そおっと目を開けてみると、目の前にはさっきと同じ卓上鏡がある。
 恐る恐る頬に触れてみれば、【鏡の部屋】では感じない感触がある。

「あれ?  【鏡の部屋】じゃない」
 てっきりまた入れ替わったんだと思ったのに……。

 部屋の中をぐるりと見渡すと、一つだけ変化があった。
 机の上に置いてある鏡が、キラキラと光っている。
 なんだろう? と思って鏡を見ると、わたしが映っている。

 ……違う。
 映っているのは、わたしであってわたしじゃない。
 鏡の中からニッコリこちらに向かって手を振っていた。

「莉、菜?」
 入れ替わってから、というか鏡越しにこうして目線を合わせたことなんて今まで一度もない。
 不思議な気持ちと、不安じゃなかったかなと心配が入り混じる。

『やっほー! もうひとりのあたし。元気ーっ?』
 こちらの心配を吹っ飛ばすくらい能天気な声が聞こえてきて、ガックリと肩の力が抜ける。
 なんか、思った以上に元気そうなんだけど。
 え? 莉菜はこの状況、わかってるの?

『おーいっ。聞こえてるー? 返事してよぉー』
 鏡の中から一生懸命手を振っているから、わたしも小さく振り返した。

「げ、元気よ。そっちは?」
『あたし? 元気よー! かなりビックリしたけどね! すごいねこの部屋。まんまあたしの部屋じゃない。しかもそっちの様子がバッチリ見えるの。ねぇ、今までずっとここにいたの?』
「うん、ずっといたよ」
 【鏡の部屋】からずっと莉菜のことを見ていた。
 その部屋に、本人がいると思うとなんとも不思議なんだけど。

『そっかー。全然知らなかったよ』
「そりゃそうだよ。だってこんな風に繋がることなんて今までなかったんだもん」
『だよねー。もっと早く知ってたらなー。こんな面白いこと、今まで知らなかったなんて』

 面白い、か。
 莉菜からみればそうだよね。
 わたしは、【鏡の部屋】にいる間、莉菜の様子を見るのは楽しかったけれど、面白いとは思わなかった。
 そこがわたしの日常だったから。
 そっか。今わたしが楽しい、面白いと思っているように、莉菜にとっては【鏡の部屋】が新鮮で楽しいんだ。
 
「居心地は?」
『快適! 不思議なのがまったくお腹空かないんだよね~。身体もなんか軽いし、幽霊みたい?』
「だよね。わたしはすべての感覚に驚いているよ」
 動いたらお腹は空くし、疲れて身体は重くなる。お母さんがご飯作ってくれたら匂いがする。

「そうだ。小テスト、あまり成績よくないと思う。ごめんね」
『そんなのいいよー。あたしだったらもっと書けなかったと思うし』
 って、あれ以上に書けないって、真っ白で提出するってことじゃない!
 それはいくらなんでもヤバすぎるでしょ。

 それにしても、急に【鏡の部屋】なんて場所と入れ替わったのに、あっけらかんとしている莉菜の逞しさはすごい。
 逆の立場だったら、わたしは不安になると思う。
 誰とも接することもない、感じることもない見るだけの世界に。