ミラー☆みらくる!

 そっか。あれがキッカケだったんだ。
 かわってあげたいなんて思ったのはじめてだったし、まさか本当に入れ替わっちゃうなんて思わなかったんだけどね。

「莉ー菜。ぼぉーっとして、どうしたの?」
 入れ替わりの原因に思い当たったことで、思わず考えごとに集中しちゃった。
 芹香ちゃんが、手のひらをヒラヒラさせて心配そうに顔を覗き込んでいた。

「小テスト! どうしよう!?」
 こうして莉菜と入れ替わったところで今まで勉強なんてしてきたことないし、わたしの頭の中は莉菜と同じくらいの知識のはず。
 つまり、勉強できない状態なのはかわらないのだ。

「本当に、しょうがないなぁ」
 はぁっと、大きく声に出して芹香ちゃんがため息を吐いた。
「芹香ちゃん?」
「小テストは範囲が限られているし、今からでも詰めこめばちょっとは点数とれるはずよ」
「本当!?」
「って、昨日もそう言ったはずなんだけどね」
 呆れた様子で言われてしまえば、「あはは」と笑ってごまかすしかない。
 だって部活で走りこんでいるうちに、小テストの勉強しなくちゃいけないことなんて忘れちゃったんだもん。
 そんな莉菜に、呆れながらでもこうして面倒見てくれようとする芹香ちゃん、やっぱり大好き。

「ありがとうっ、芹香ちゃん! よし、早く教室行こうっ!」
「ちょ、莉菜! 急に引っ張らないでよ」
「だって少しでもはやく教室行かなくちゃっ」
「そう思うなら、ちゃんと前日勉強してきなさいって」
「はーいっ」
 調子のいいわたしの返事に苦笑いしながらも、芹香ちゃんはわたしが引っ張る手を振り払うことなく、一緒に下駄箱まで走ってくれた。

 そうして頑張って詰め込んだものの、そんなに簡単じゃないよね。
 教室に入ってすぐに芹香ちゃんから「とにかくこの単語覚えなさい!」と小テスト範囲の英単語を教えてもらったんだけど、どんなに覚えようと思ってもスルスルと脳から零れ落ちていっちゃって。
 それでもかろうじていくつか覚えられた単語と、あとは感に頼ってテストの問題を埋めることはできた。
 とはいえ、いい点数ではないだろうなぁ。
 芹香ちゃんは「真っ白で出すよりは、いいよ」と一応なぐさめてくれた。

 落ちこんだ気持ちを吹き飛ばすように部活で思いっきり走ってみると、それはすごく気持ちよかった。
 莉菜が部活大好きなのがよくわかる!
 走っている間は、ただ目の前のゴールを目指すだけで無心になれるし、身体がよく動くの。
 めいっぱい走ってきて汗だくだったから、家に帰ってきてからすぐにお風呂に入ってご飯食べて。
 お母さんが作ってくれたご飯、すごく美味しかったなぁ。
 ちょこっとハンバーグが焦げていたけど、それを笑いながら食べる夕食は幸せだった。
 充実した一日を終えて、その後すぐに眠くなってしまう莉菜の気持ちもよくわかる。

 朝の入れ替わりからはじまって今日一日、本当に楽しかったもん。
 だけど、ずっと気にもなっていた。
 わたしが今こうしている間、莉菜はどうしているんだろう?
 【鏡の部屋】にいるのかな? 不安になっていないかな。
 そう思いながらも楽しくてつい、気づかないふりをしてしまった。
 ごめんね、莉菜。
 部屋の机に置いてある卓上鏡に映る姿を見ながら、わたしは莉菜のことを思った。
 すると鏡から眩い光が放たれた。