ミラー☆みらくる!

 莉菜は洗面所で顔を洗ったあと、鏡と睨めっこしながらブラッシングしていた。
 だけどずっと、ため息が零れて止まらなかった。
 どうしたんだろう? 普段の莉菜は元気いっぱいで、女の子なのに身だしなみもあまり気にしないタイプだから、さっさと支度を終えて飛び出していっちゃうのに。
 今日は全然洗面所から離れる気配がなかった。

「あー……学校行きたくないな」
 うつむきがちに呟いた言葉を聞いて、わたしはすごくビックリした。

 あんなに学校大好きなのに、どうして?
 クラスでも楽しそうに過ごしているし、部活だって熱心に練習しているのに。
 そんな莉菜が憂鬱になるものって……と思いを巡らせて、ひとつの理由に思い当たった。

 そうだ! 今日は英語の小テストがあるんだった!
 莉菜が学校で唯一嫌いなもの。それが勉強だった。
 身体を動かすのが大好きな莉菜は、机でジッとしていることがつまらなくて、教科書も先生の話も全然入ってこないらしい。
 だから当然、小学生の頃から成績は良くない。
 通知表は体育と音楽だけが飛びぬけて後は目をつむりたくなる。
 お父さんやお母さんには呆れられるけど、それでも今までは強く注意されてこなかったからたいして気にしていなかった。
 それが、中学に入ったら事情が変わったの。

 所属する陸上部の方針が文武両道だっていうこと。
 中間や期末テストで赤点をとった生徒は、どんなに部活の成績が優秀でも試合に出させてもらえない。
 部活が生きがいの莉菜にとっては大問題!
 だったら頑張って勉強すればいいと思うのに、本当に大嫌いみたいで教科書を開こうともしないんだよね。
 そんなわけで莉菜はため息をついていたんだ。

「学校、行きたくないなぁ」
 何回目かの呟きを聞いて、わたしは思ったんだ。
 あまりに莉菜が落ち込んでいたから。そんな莉菜を今まで見たことがなかったから。

 『かわってあげられるなら、かわりに行ってあげたいけどね』
 その瞬間、辺り一帯が目を開けていられないくらい眩い光に包まれたんだ。