ミラー☆みらくる!

 先生、t、e、a、c、h、e、r……っと。

 普段ならベッドでゴロゴロしている時間、机に向かってひたすら英単語を書き続ける。
 小テストでわたしが書いた答えは、aがeになっているし、hのあとのeがaになっていた。

 放課後、鳴海にチェックされたその答案では、スペルミスを全部指摘された。
 実は授業で返却されたときに正しい答えを藤っちが教えてくれていたのに、わたしったらその記入さえもスペルミスをしちゃっていたのだ。

 危ない危ない。こういう点でもペアで勉強見てもらえるって大事なんだ。
 ひとりだったら間違いに気づいていないもん。

 とにかく書いて身体に覚えこませろって言われたから、ひたすらにペンを走らせる。
 脳筋としては、がむしゃらとかひたすらって性に合っている。
 多分、莉菜の身体がこんなに机に向かっているのはじめてなんじゃないかしらね。

『まさか連帯責任とはねぇ~。藤っちも考えたもんだね』
 わたしが必死にシャープペンを走らせているのを、卓上鏡から莉菜が見守っていた。
 今日も帰ってきてから入れ替わりを試したんだけど、何回やってもうまくいかなかった。
 入れ替われないならわたしが勉強するしかないから、こうして机に向かっている。

「だよねぇ。大会出られないなんてなったら、そのあと絶対に申し訳なくてしょうがないよ」
 実際この方法はかなり効果的らしく、先輩から聞いたところではペアワークを実施した後に赤点をとったペアはほとんどいない。
 先輩になればなるほど連帯責任の重さは感じるから、じゅうぶん気を付けるんだって。
 それでもついうっかりで毎年数名がペアワークになってしまうらしい。

『それにしても鳴海かぁ~。確かにあいつ、成績イイもんね。性格は難ありだけどっ』
 ちょっとだけツンとした言い方に、莉菜が苦手だって思っている気持ちが伝わってくる。
「でもまぁ、痛いところ突かれたね」

 ――朝練、言い訳にするなよ。

 芹香ちゃんにも何回か「授業中寝ない!」って注意されたことがある。その都度朝練を言い訳にしていた。
 同じように朝練している人がみんな赤点とったり授業中寝てるわけじゃないもんね。

『ふーんだっ! 鳴海に言われたくないもん。いっつも意地悪ばっかり言うくせに。とにかく戻れなかったから、明日もよろしくねっ』
「あ……」
 声をかける間もなく、莉菜の姿は映らなくなってしまった。

 入れ替わり、今日も上手くいかなかったんだけど、このままでいいのかな。
 やけにあっさりしている莉菜の様子も気になる。
 そしてわたしの気持ちも少しずつ、欲が出てきてしまう。
 【鏡の部屋】とは違い色んなことが起こる現実が楽しくて、楽しすぎて。やがて戻った時にわたしは、淋しくなっちゃいそうで不安になる。

 もうちょっとここにいたい気持ちと、これ以上いるときっとつらくなるから早く帰らなくちゃっていう気持ち。
 考えるとモヤモヤするから、振り払うようにノートに英単語を書き続けた。