ランタンライトヒーローズ



「えっ…」

母さんが絶句する中、父さんは腹を抱えて
笑い出した

「彗!ここ笑うとこじゃないから」

「…あ〜、ごめん、いや、父さんがほんとに
そんなこと言ったのかな、ってさ、
母さん、意訳し過ぎなんじゃないの?」

しかし麗子さんは澄ました顔で
「隼があまりに必死だから、まあ、ジジ心
ってやつかしら」

「はぁ?」

じいちゃんの許可は出たにしても、
まだ次のハードルがある
母さんだ

「でも、石垣まで中学生の隼を一人で行かせるなんて…ねぇ、パパ」
さっきは勢い余って「彗」呼びしてしまった母さんだが、やや冷静さを取り戻たらしく
最終判断を父さんに投げた

「隼は、石垣(あっち)で、ほんとにハーブを
手に入れられるのか?やっぱり見間違いでした、
ってんじゃ、意味がないんだぞ」

「…大丈夫だよ、他人(ひと)んチのモノなら
ちゃんと断るし」

いや、この場合100%、他人様のモノだろう

父さんは、う〜む
と唸りながら、それでも妥協点を見つけたようで

「そこまで言うなら…
父さんが病院を拒否ってる以上、
そのメディカルハーブ?多少なりとも効果が
あれば、手に入れるに越した事はない
ただ…」

父さんは、一旦、言葉を切ったがまたすぐに
「俺らが付き添っても良いんだが、そうだな
《《連帯責任》》って事で、和にお守りを頼むか」

ゲッ!
和がついてくんの?

意図せずお目付け役に指名された和は
困惑気味に

「は?何の責任?」

「お前まだ学校始まってないだろ?ちょっと
コイツと一緒に石垣行って、見て来てくれ」

急遽白羽の矢が立った格好の和は不満気に
「俺にも色々予定が…」
などと、ぶつぶつ言っていたが、麗子さんの

「費用は私が出すから、そうしてくれない?和」

のダメ押しで、渋々承知した

「まさか沖縄まで行って日帰り?」

和の言葉に父さんは
「それはスポンサー次第だな、あと隼は、半分
自分で旅費を払えよ、お年玉、まだ残ってんだろ?」

「ゲッ、マジ?」

「お前が言い出しっぺだからな、
ハーブだかなんだか、見事任務を遂行した
あかつきには、返してやる」

むむ〜、さすが父さん
一筋縄ではいかない
俺もムキになって

「…それで良い、必ず見つけるし」

「ふっ、そうと決まったら、早速手配だ」

父さんがスマホで検索し始めたのをキッカケに
みんなホッとしたように雑談を始める
そんな中、和は俺に近づいてくると小声で
「アレか?灯台がなんか関係あんのか?」

と言ったので

「たぶん…」

「なんだよ、頼りねーな」


俺にあのロケットを動かせるのか
イマイチ自信が無いし、
お目付け役の和をどこまで巻き込んで良いのか
自分でもわからなかったが
ひとまず親公認で石垣に行ける事は決まった

一か八か
ハイリスクな上、成功率が低そうな
宇宙(スペース)チャレンジ

それでも俺はじいちゃんに長生きして欲しい
じいちゃんがいなくなった後の麗子さんを
想像したくない

父さんが

「じゃあ、今週末な、朝イチ向こうへ飛べよ」

母さんが

「テニススクールは、お休みね」

父さんが和に色々指示を出しているのを
後ろからぼんやり見ていると
じいちゃんが俺を手招きした

「…何、じいちゃん、どした?具合わる…」

俺が近づいていくと、じいちゃんは耳元で

「白いボタンだ」

「白いボタン?」

その意味するところは、なんとなく理解できた
きっとロケットの操縦に関わる事だ

じいちゃんは、それだけ言うと疲れたらしく
ベッドに横たわって、どうやらそのまま
眠ってしまったようだ

俺はその寝顔を見つめながら
いつに感じた事のない使命感に燃えていた


◇◇◇◇