ランタンライトヒーローズ



一斉に視線が俺に集まった

最初に口を開いたのは母さんで

「知ってるって、隼、またYouTubeでも長々と
見たんでしょう」

まさかこの場で、テンメッシュ星の話など
しようものなら、夏休みボケだなんだと
母さんの怒りを買った挙句、相手にしてもらえなくなりそうだ
どうする?

その時だった

「ただいま〜」

和の声だ

「あら、和が帰ってきた、今日は早いわね」

霞さんが部屋を出ていくと今度は父さんが

「それで?隼、どこで売ってたって?
この間行った茨城の道の駅か?」

「違うよ、その…沖縄…みんなで石垣島に行った時に見たんだ」

「石垣島?」

「そ…石垣でホテルの探検ツアーに行った時に見たんだ」

「探検ツアー?ああ、お前たち子供らが参加したって言うアクティビティか」

「俺と和だけちょっと横道にそれたんだよ
その時に見た…気がする」

すると麗子さんが不思議そうに
「どんな種類のハーブだか、隼わかってたの?
家で使っていたハーブ、お料理にも使えるけど
精油なんかも抽出できる、
いわゆるメディカルハーブよ」




俺が答える間もなく、今度は父さんが
「横道に逸れたって、そんな話聞いてないぞ」

今更ソコを突っ込まれると具合が悪い
モゴモゴと口を動かしていると
ガチャッ
寝室のドアが開き

「あ、何?皆さまお揃いで
おじいちゃん(もうで)?」

和だ
和がのっそりと入ってきた

「ああ、和、ちょうど良いところに来た
お前、石垣で隼と脱線行動してたのか?
探検ツアー」
父さんの問いかけに

「あ、彗さん、ちーす…、脱線?どれだろ?」

最初とぼけていた和だったが、すぐに
「探検ツアー、あの、石垣の虫を愛でる会」

俺は慌てて

「俺、ツアーの途中で見たんだ、じいちゃんチで
前に飲んだ事あるハーブティーのハーブと同じヤツ…、和は知らない…かも」

俺はやや上目遣いで和を見る
和が否定的な事を言うかと身構えていたが
一瞬、間を置いてから

「…ああ、なんか見た《《気がする》》な」

「そうなの?」
と、麗子さん

「それって、うちの庭を占拠していた草だろ
そういや、最近見ないけど、それがどうかしたんか?」

麗子さんがこれまでのやりとりを話すと、和は
「何、じゃあ、それを取って来いって話?」

「勝手にむしり取って大丈夫なものでもないだろ
例え同じハーブだったとしても、持ち主がいる」

父さんが冷静に言うと、麗子さんが笑いながら

「ふふっ、そうよね、
野草だとしても、むやみやたらにはダメよ
あ…わかった、
隼は、また石垣に行きたいって事を
言いたいのでしょ」

それは…
あるかもだけど
じいちゃんにはきっとあの子が栽培している
草木が効くんだ
俺は直感的にそう思った

「そんなあやふやな話じゃ、どうしようもないわ」
母さんが呆れたように言う
父さんは何やら思案顔だ

ダメか…
そりゃそうだな
そもそも俺だけで石垣島とか
無理筋な話
だいいち、あの灯台まで行ったとして
《《アレ》》をどうやって動かす?

その時だった
それまで黙っていたじいちゃんが麗子さんを
呼び、自分の近くに座らせると
何やら耳元で話している
しばらくして麗子さんがちょっと困ったような
笑みを浮かべ

「煌さんが、隼を石垣に行かせてやれって」

「えっ?」
「父さん、いったいどうしたんですか?」

今度は視線がじいちゃんに集まる

再び、麗子さんが通訳のように

「可愛い子には旅をさせろ、だって」