ランタンライトヒーローズ



じいちゃんは、いたずらっぽくニッと笑うと

「そうだな、俺にとっての薬は
隼がこうして顔を見せに来てくれる事かな」

それは嬉しいが
「じいちゃん、頼むから、マジに!」
俺が怒ってみせると

「ふふ、自然…自然からもらえる薬が1番さ」

父さんが

「それは、民間療法って事?それにしたって
原疾患がわからなきゃ、何が効くのか、
効果の確かめようも無いんじゃない?」

ちょうどその時、霞おばさんがお茶を運んできてくれた
じいちゃんは、半身を起こすと
お茶の入ったカップを麗子さんから受け取り
おもむろにひと口飲む
そして

「人工的に命を永らえるより、自然に
お迎えが来るのを待つさ」

「お迎えなんて、縁起でもない
母さんが…いえ、みんな悲しみますよ」

父さんが困ったように言う
まったく…
こんな弱気のセリフは、じいちゃんらしくない
よっぽど具合、悪いんかな
その時

「あら、このお茶、いつもいただいてたお茶と
風味が違うみたい」

ふいに母さんが、カップを口元から外しながら
そう言った



すると麗子さんは

「…気がついちゃった?
いつものお茶ね、うちのお庭に植っている
フレッシュハーブを使っていたのだけれど、
今年も春から気温が高いでしょう?
うまく育たなくて、一部枯らしてしまったの
まだ少し弱々しく残ってはいるけれど
だから今は、香りが近い市販のものを
ブレンドしていれているのよ、ね」

霞さんが頷きながら
「前の方が美味しかったかも」

「ハーブって暑さに弱いんですかね」

「以前は煌さんの知り合いの方が、イギリスからわざわざ煌さんの好きなハーブの苗だからって
送ってくれていたんだけど、その方も何年か前に亡くなってしまって…
それに今、外来種の動植物?
輸入だとか、郵便で送るにも何かとうるさいでしょう?」

「あぁ、生態系のバランスを崩すかもしれないですからね、めぐりめぐってどんなダメージがあるかわからない」

「でも、あのハーブは、ほんとに健康茶そのものっていうか、味は独特だけど、いかにも体に良いって感じだったのよね
そういえば、あのハーブが手に入らなくなってから、煌さんの調子が良くないような気が…」

麗子さんは、じいちゃんをチラリと見た

じいちゃんは、聞こえないふりをしているのか
お茶を口にした後は、目をつぶったまま
じっとして動かない

母さんたちの会話を聞きながら
俺もこのお茶、あまり得意ではないが
そう思いながら、お茶を口元へ運ぶ
ふわっと鼻に広がるハーブの香り
その匂いを嗅いだ時だった

あれ…?
この匂い

その瞬間

あの日あの時の記憶が
鮮やかによみがえる

俺、このハーブティー
飲んだことあるよな?

フラッシュバックしたのは
城のような建物
色白の美少女

そして…ロケット!

石垣島での出来事が一気に頭の中をぐるぐる
夢…じゃないよ
あれ…リアルだ!

今まで夢うつつと思っていたが
俺、行ってるよ!
行ってるじゃないか、宇宙‼︎
テンなんとか
そうだ
テンメッシュ星!

俺はゴクリ…!
お茶を飲むと

「お、俺、ハーブが栽培されてるとこ
知ってる」